Apr 22, 2001

Hannibal

Title:Hannibal
Director:Ridley Scott
Year:2001
Place:Cine Citta
Eval:★

一瞬、Denis Hopperかと思った。

前作がまだ少なくともサイコホラーとかサイコサスペンスと呼べる代物だったのに対し、本作は完全にモンスター映画。

Lecterのような犯罪者は現実には存在しない。彼はいくつもの犯罪者を組み合わせて作り出された非現実的な虚構の存在であり、自分を侮蔑する者を食うというポリシーは、我々が自分を侮蔑する人に怒りを感じていることの反映だ。我々が理性で怒りを抑えることはそれ自身ストレスであって、それを躊躇なく実行できるこのシリーズのLecterのような存在が快感に感じられるのは不思議ではない。Frankensteinを挙げるまでもなく、このような役割を与えられた怪物が登場する物語は数多くあり、このシリーズにユニークなことではない。それゆえ前作は「プロファイリングの技術を紹介する」という独自性を持たされていたが、本作は(既にやり尽くされているプロファイリングネタを繰り返すべきではないという賢明な判断から?)「怪物の痛快な生態を具体的に紹介する」ことで独自性を担保しようとしている。いずれにしろ繰り返し行われる残忍な凶行を「爽快に」見せるには、それが残忍であればあるほど、怪物は「魅力的」でなければならないのは当然である。

だがしかし。Anthony Hopkinsは太りすぎた。演技には問題ないのだが、いやだからこそと言うべきか、いくら上品な立ち振舞いをしても、体型を意識させるタイトな衣装や、シルエットを使った演出や、Ridley Scott印のアクションが多出するこの映画では、あの緩い体型は許されない。特にジョギング中のJulianne Mooreと一緒に腹を抱えて走るブザマなシーンがあるが、(あまりに辛かったのか)一瞬で終わってしまって「なんだったんだ、あれ?」感が終幕まで付きまとってしまう。少なくとも(この作品をべた褒めする人達の言う)「カリスマ」からは程遠い。Terence Stampを見習うべきだ。Denis Hopperが演じる間抜けなサイコ悪党じゃないんだから。

プロットの問題も多い。「10 most wanted」リストにも載るLecterが米国に入国する時も出国する時も誰にも見咎められないのはなぜか。飛行機で移動しているにも関わらず、である。特に後者は手首のない人物をチェックすることなど造作もない。誘拐後、救出されたLecterはどこでどうやってClariceに着せるドレスや手術道具や麻酔を調達したのか。ClariceはLecter救出時に手錠を失ったはずだが、Krendler宅でLecterと自分に架けた手錠はどこから湧いたのか。冷蔵庫に髪を挟まれていたはずのClariceは髪が抜けていないどころか、返り血も浴びた様子はない。で、実際のところ、ボートなしにどうやって逃げるのか。などなど。Lecterの怪物的能力の表現とプロット上の欠陥がないまぜになって混乱を惹き起こしている。

そうした問題にも関わらず、(主にスタッフワークの点で、だが)評価すべき点は数多くある。カラスのCGとGouldの弾くゴールドベルク変奏曲を用いたタイトルコールは、ちょっと「俗」にも思えるが、不気味な殺人鬼の世界に観客を効果的に誘う。フィレンツェのシーンでは、芸術都市の雰囲気を醸し出すのに照明が大きな役割を果たす。石畳に落ちている月光を照明を使って表現しているが、効果的かつ自然であり、何より美しい。指紋を入手するためにスリがLecterを追跡するシーケンスは、短いショットを繋ぎに繋いで緊迫感を表現している。全般にヨーロッパ映画ほど削りすぎではない程度にコンテがコンパクトにまとまっている。(予告編ではわざわざ隠していた)Mason Vergerのメイクも良くできていた。あれほどの出来でなければ、冒頭からアップで登場させることは不可能だろう。もっとも冒頭から登場して露出過剰(あたかもGoldfingerのよう)である上に、物語が米国とイタリアで並行して進行するためにエピソードが不足しているために、「復讐を誓う醜悪・俗悪・卑劣な敵役」としての印象は弱まってしまっている。同様のことが、とりわけクライマックスを盛り上げ損なっているという意味で、KrendlerとCordellにも当てはまる。これらはもちろん脚本の問題である。他に演出面で挙げるとすれば、ラストシーンで逃亡するLecterの乗るジャンボ機を斜め後方から撮ることでエアラインを判断できなくしてある点か。即ち逃亡先が不明だということであり、細部まで検討して作られた絵であることが分かる。

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